2001年夏号:幻の謎ぱ~機 NEC VT1



 これまで海外ブランドの謎ぱ~機を紹介してきた本連載だが、初めて日本メーカーの端末について取り上げた。NECが1995年に社内限定販売した携帯電子メール端末のVT1である。この製品は、後のモバイルギアのパイロットモデルでもあった。筆者は、この端末を三台保有しており、うち一台は、元箱入のデッドストック状態で保管されているのだが、入手の経緯については、今となっていは忘却の彼方である。

 日本メーカーと書いたが、厳密には、Made in TAIWANで、筐体裏面の銘板シールにもその旨が明記されている。本機の外観は、台湾の有名な謎ぱ~メーカーであるTidalwaveのME-386とほぼ同じである。同社は、このME-386を様々なブランド名でOEM販売しているが、VT1もこのマシンをベースに開発された製品なのかも知れない。

日本メーカーの製品であるため、当然のことながら最初から日本語化が施されており、キーボードも日本語対応となっている。マシンの電源を投入すると、独自のシェルプログラムが立ち上がる仕様となっていたが、特定のキーを押下することにより、このシェルプログラムをバイパスしてDOSに降りることが可能だった。DOS環境では、内蔵されているFEPが利用できないという問題があったが、別途市販のFEPを組み込むことにより日本語入力が可能だった。このあたりに謎ぱ~的フレーバーを感じさせられたものだ。

 今回の前フリでは、前号に引き続いて電卓コレクションについて書いた。筆者の一番のお気に入りのTexas Instruments製のヴィンテージ電卓、TI-2500シリーズである。1972年から1974年までの間に、合計6つのバージョンが発売されたこの電卓は、70年代特有のスペースエイジ的な雰囲気を漂わせた曲線的なフォルムを持ち、「2001年宇宙の旅」に出てきてもおかしくないデザインだ。表示部には、12桁の赤色LEDが採用されているが、それがまた近未来的な趣があり実に魅力的なのだ。






NECの「謎ぱ~機?」VT1
これを謎ぱ~機と呼ぶかどうかは別にして、少なくともマニアックな製品であることは確かだ。

VT1の元箱とパッケージ内容
後のモバイルギアとほぼ同一である。

元箱の製造国表示
MADE IN TAIWANの表記がある。

VT1とME-386#1
左がVT1、右がME-386。大きさも基本的なデザインもほとんど同じだ。

VT1とME-386#2
上がVT1、下がME-386。裏面の構造も、電池室からリセットボタンの位置までほぼ同じとなっている。

VT1のPCカードスロット
VT1ではPCカードスロットは1基のみである。この点がME-386と大きく異るところ。

I/Oコネクタの比較
上がVT1、下がME-386。VT1は特殊形状のシリアルコネクタ1個のみだが、ME-386は汎用形状のシリパラコネクタが実装されている。

VT1の電池室
電池の入れ方はME-386と同じ。単3乾電池4本を挿入する。

VT1のPCカードスロット
きちんと挿し込んでも3mmほどカードの端がはみ出してしまうのはご愛嬌。ME-386と同じ特徴を有している。

VT1のキーボード
16mm程度のキーピッチが確保されタッチタイピングは快適だ。右上部の「携帯電子メール端末 VT1」の表記が、このマシンの用途を端的に表現している。

VT1に内蔵されるシェル画面
通常起動すると表示されるシェルの画面。DRSHELL.COMというプログラムにより表示される。

DOS/C化されたVT1の画面#1
ファイル管理ソフト「FD」を起動したところ。液晶の品質は高くコントラストも十分だ。解像度は640x200のCGA。これがモバイルギアになるとハーフVGA(640x240)となる。

DOS/C化したVT1の画面#2
Vzエディタと日本語FEP「刀」で文章を入力しているところ。変換スピードも速く、十分実用になる。残念なのは1画面11行表示なので若干狭いことである。22行化された画面を見てみたかった。

ヴィンテージ電卓TI-2500
プラスティックの筐体は非常に分厚く存在感がある。なんと言ってもこのスペースエイジ感覚のデザインが最高!

TI-2500のLED表示
当時の電卓では一般的だった赤色LED表示を採用。繊細かつ暖かみのある表示である。

TI-2500初代機の電池室内部
使用電池はナント!単3ニッカド充電池6本。後のバージョンでは4本に削減されるが、それでも多いことに変わりはない。

TI-2500初代機のパッケージ
元箱、取説、ACアダプタ付きのコレクターズアイテム。

Collector's Guide to Pocket Calculator
電卓コレクター必携のカタログ本。これ1冊で歴代ヴィンテージマシンのすべてがわかる究極のオタク本。