純メカニカルな計算機、キャンバー数字そろばんである。製造元は「創美株式 会社」というところ。取り扱い説明書には、「手軽な理想的サイズ」「手荒な操 作にも耐える機構」「そろばんと違って答の記録性」「近代的なデザイン」「小 銭で買える大衆価格」といった謳い文句が記されている。しかし、「大衆価格」 という表現は、すごいものがあるな。製造年は不明であるが、おそらくは昭和4 0年代の製品と思われる。そろばんと同じで電気に頼る部分が一切無く、電源不 要で使用できるのは、これはこれでけっこう便利かもしれない。 本体上面には、6個の数字窓と6列のスリットが付いている。このスリットの 各桁には、0から9までの数字が印刷されている。スリット部分は穴が開いたベ ルトのような構造になっており、この穴に付属のペンを挿して、上下にベルトを 移動させることが可能となっている。スリットは左右に移動できるようになって おり、加算時「+」には数字は黒で、減算時「−」には数字は赤で示される。 スライド方向は、加算時は下、減算時は上となる。 使い方は、わかってしまうと簡単で、加算の場合には被加数をセットした後、 加数をセットし、桁上がりがあれば隣の桁を1つスライドさせて、窓に表示され た結果の数字を読み取るといった具合だ。減算時はスライド方向が逆になるだけ で、基本的には同じインターフェスとなる。
一例として、非常に簡単な加算「8+7=15」をやってみよう。数字そろば んのセット方法は、以下の写真に示した通りの手順となる。タイガー手回し計算 機と異なるところは、桁上がりは人間が記憶しておき、発生したら1つ上の桁を 操作しなくてはならないことである。なにぶん、この計算機の構造は単純至極で あるため、桁上がり、桁下がりの制御まではサポートしていない。これはそろば んと同じことだ。 ある程度慣れれば、掛け算も比較的容易に行うことができる。添付されている 取り扱い説明書には、「463×84=38892」といった、かなり複雑な計 算方法も記載されている。 構造が簡単であるため、本体は非常に軽くて小さい。しかも電源不要で、物理 的な破壊は、まずありえない耐久性がある。電卓が世に出る前の時代では、これ はこれで結構重宝していたのではないだろうか?また、電卓と異なり、計算時に は少しだけ頭を使わなくてはならない点も評価できる。これを常用しておけば、 暗算や得意になるだろう。
「8+7」の計算方法、ステップ1。まず被加数「8」の穴にペンを挿す。 |
ステップ2。そのままペンを一番下まで移動させると、数字窓には「8」が表示される。 |
ステップ3。次に加数である「7」の穴にペンを挿す。 |
ステップ4。そのままペンを一番下まで移動させると、数字窓には「5」が表示される。この時、最下位桁でオレンジ色に表示された「1」が、1周回って上に表示されたことに注意。これは、桁上がりが発生したことを示している。 |
ステップ5。ステップ4で桁上がりが発生しているので、2桁目を「1」だけインクリメントさせる。2桁目の「1」にペンを挿して、一番下まで下ろす。 |
ステップ6。数字窓を見ると、加算結果である「15」が表示されている。これで計算終了! |