リストマーク 大滝ランド跡(2003年03月)

写真1:大滝ランドホテル棟全景


写真2:県道59号上の大滝ランドへの分岐点

 廃墟マニアの間ではつとに有名な「大滝ランド」である。「大滝」と書いて「おおたる」と読むそうだ。場所は静岡県賀茂郡西伊豆町大沢里付近。松崎方面からは、県道59号を通り禰宜畑村を通過して、10分ほど走ったところになる。湯ヶ島方面からは、仁科峠を通過し山道を下り、宮ヶ原の集落を通り過ぎてすぐだ。この辺りは仁科川に沿って細い道が続く、深い山間の地域である。周囲は山に囲まれ、鬱蒼たる森林が続く。そのような中を走っていると、県道から鋭角的に下る道があり、角には「大滝」の看板が半ば倒壊しかかったまま立てかけてある。ここが大滝ランドへの入り口である。うっかりすると見逃してしまうので、注意が必要だ。

 なお、ここに行くのには、松崎方面から向った方が若干楽である。湯ヶ島方面から仁科峠を越えて行くルートだと、すれ違いがやっとで見通しの悪い道路を、延々と運転しなくてはならない。

Google Maps上での位置は、下記の通り。
大滝ランド跡


写真3:大滝ランドへの分岐点に置かれている看板

 そもそも、当初の目的では大滝ランドへ行くつもりでは無かった。この施設の奥にあるという落差40m以上の「大滝」と、そのまた奥の伊豆天城鉱山跡を訪れる予定であった。しかし、メインである伊豆天城鉱山跡は、その入り口を発見するまでに時間がかかってしまい、今回は残念ながら調査することができなかった。その代わりと言っては何なのだが、有名な大滝ランドを見てこようと思った次第である。

 大滝ランドは1980年代に設立されたテーマパークだったそうだ。当初、温泉ホテルをメインとした娯楽施設を建設したのであるが、肝心の温泉が出ず、また立地的にも極めて不便な場所であることもあり、間もなく閉鎖されてしまう。その後、利権問題が泥沼化したようで、現在は取り壊されることも無く、荒れるにまかせた状態になっている。もっとも、管理人はきちんと常駐しており、敷地内部は個人宅として扱われている。そのため、見学時には必ず許可をもらった方が良いだろう。管理人の方は親切に対応してくれるので、安心して良い。また、車で来た場合には、駐車場料金として300円が必要となる。きちんと管理された駐車場と言えるものは無いが、個人の敷地内に入るということを考え、入場料だと思って納めることにしよう。

 ざっと見たところ、大滝ランドは鉄筋3階建てのホテル、プール、キャンプ場、養殖池、洋蘭センター、大仏(胎内巡り付き)、オートキャンプ場そして大滝観光といった要素で構成されていたようだ。当時の入園料は800円。現在ではかなり取り壊されてしまった施設が多く、洋蘭センターは更地になっており、事前の知識が無ければここに洋蘭センターがあったことなど全くわからない。全体的に極めてカオスで、ある面宗教色の強い観光スポットと言える。そのため、かなり怪しくて不気味な空間になっている。園内には犬もたくさん飼われており、敷地内に入ると一斉に吠えまくる。筆者は予め情報を仕入れていたから良かったものの、全く事情を知らない人であれば、まず確実に引き返してしまっているだろう。正直言って園内施設の趣味は悪く、あまり長居をしたくない場所であった。今回、目的である大滝を見学した後は、早々に引き上げた。以下、その模様をフォトレポートする。

写真4.メインとなるホテルを遠望する。手前にあるのは、鮎の養殖池。なぜここで鮎を養殖しているのかは、良くわからない。正面右手に見える3階の建物がホテル本館であり、左側に見えるの2階の建物は「国際イオン研究所」であったそうだ。何を研究していたのかは、一切不明。ホテル本館の窓ガラスはほとんど割れて無くなり、壁面には多くの落書きが見受けられた。ホテルの前には、様々な形をしたテーマパーク向けの廃自動車が駐車していた。


写真5.園内には仁科川の支流が流れており、所々にこのようなアーチ型をした橋が架かっている。この川の上流に、40mの落差がある大滝がある。この写真は、園内の外れにあるオートキャンプ場付近から、入り口近くにあるホテル正面方向を撮影したもの。左側に見えている建物は、オートキャンプ場に隣接する施設。どれも荒れ果てている。


写真6.園内外れにあるオートキャンプ場から、仁科峠方向を見たところ。切り立った岩の近くに、大滝がある。手前の左下に見えるコンクリート製の施設は、おそらくはオートキャンプ場のシャワー室。右側奥がオートキャンプ場になっている。


写真7.オートキャンプ場のシャワー室と思われる建物。しかしこれは単なる想像であって、本当は別の目的で建てられたものなのかもしれない。内部が混乱の極みを呈しているため、今となってはわけがわからない。完全に荒廃しきっている。


写真8.オートキャンプ場に設けられた宿泊用の小屋。どれも簡単な作りで、数棟見受けられた。小屋の前には駐車場が設けられている。


写真9.オートキャンプ場の駐車場に乗り捨てられていた小型のブルドーザー。外側はボロボロであるが、機関は意外と損傷が無い。Old Timer誌の読者であれば、嬉々としてレストアを開始するレベルである。しかし、なぜここに小型ブルドーザーの残骸が???疑問は尽きない。


写真10.園内に残る意味不明なオブジェ。このような宗教色の強いオブジェが、園内の至る所に置かれている。この写真には、大きな岩の上に置かれた石製のお社が写っているが、この他にも仏像や狛犬などがあった。きちんと整理されている空間であればともかく、雑然とした敷地内に忽然と置かれたオブジェは、なんだか気味が悪い。


写真11.仁科川支流から入り口付近のホテルを遠望する。左手に広がっている空間は、その昔洋蘭センターであった場所。今はすっかり取り壊されてしまったようで、運動場のようになっている。この川沿いの遊歩道は、今でもかなり整備されていた。


写真12.写真11に示した遊歩道を、上流の大滝方向に向って見たところ。右側には洋蘭センターの跡地とその奥にオートキャンプ場が見える。この道に沿って左手に曲がり、川を渡った所に、大滝へ向う遊歩道の入り口がある。


写真13.大滝に向う遊歩道入り口に佇む狛犬。神聖な場所を示しているのだが、何とも不気味な光景だ。鳥居の奥に続く道は上り坂で、かなり暗い。人気の無い園内で、このような暗い道に侵入することは、若干の勇気が要る。大滝へはここから上り坂で10分程度の道のり。普段運動不足の体にとっては、とても良いハイキングになる。


写真14.遊歩道を入った所で突然現れた狛犬。結構怖い。


写真15.大滝までは、いくつかの小さな滝が現れる。人によっては、こういった滝を見ると「大滝だ!」と勘違いしてしまうようで、傍に置かれた看板には「この先に40mの大滝があります」と書かれていた。確かに小さいとはいっても立派で迫力のある滝だった。ネットによる調査では、大滝は別名「三階滝」と呼ばれているそうだ。そして、そこに行くまでに現れる小さな滝にもそれぞれ名称が付いており、「二階滝」「白川滝」「金龍滝」「旭滝」「川金滝」「渾床滝」と言うのだそうである。どれがどれだかさっぱり判らないが。。。。


写真16.大滝に向う途中にあるスポットの一つ、「天の岩戸」である。このように巨大な岩で作られたトンネルの中を通って行くのだが、どうやら自然にできた造形のようであり、迫力はある。この辺りの斜面には、切り立った岩肌が露出しているところが多くある。また自然にできた祠には、御神体が祀られていたりで、かなり宗教色が強い演出となっている。


写真17.人通りも少ないこの辺りだと、自然も豊かのようだ。保護対象になっている植物「ハイコモチシダ」が群生している。この「ハイコモチシダ」であるが、説明によれば以下のような由来を持っているそうだ。

 自然保護
 ハイコモチシダ
 最初に発見されたのは、大正六年横浜植物会一行が天城山付近で調査を行ったときである。
 その時日本に知られない植物であるので、和名を「はいこもちしだ」と命名をしたものです。
 今はこの大滝付近にしか群生をみることしか出来ないので、根を抜き取らないで下さい。

以上、原文のまま。若干文章が怪しい。


写真18.遊歩道の終点に現れた、落差40mと言われる「大滝」。これはなかなかのものだ。この大滝を見るだけでも、ここまで来た甲斐があったと言うもの。滝に近づくと、滝つぼから水しぶきを含んだ風が吹き付けてきて、びしょぬれになってしまう。滝つぼの近くには、見学用に作られた木製の台が置かれているが、半分腐っているのでゼッタイに乗らないこと。この大滝の上には、天城鉱山の跡があるはずだ。しかし、そこへの道は見当たらなかった。


写真19.大滝付近から、上ってきた大滝ランドのホテルを遠望する。中央下に小さく見える建物が、入り口付近にあったホテル棟である。いつのまにか、こんなに山奥深くまで登ってきていたのだ。どうりで疲れたわけである。


 大滝ランドの廃墟はちょっとばかり趣味に合わなかったのだが、大滝は一見の価値がある。途中のカオスで不気味な遊歩道には参ったが、是非見て帰るべきであろう。ところで、メインの目的であった天城鉱山跡は、結局このルートでは到達できなかった。今回は時間が遅くなってしまったため、トライすることができなかったのだが、伊豆天城鉱山跡へは、どうやら大滝ランドの入り口を出たところで分岐している、もう一本の道を進むようである。

 この道であるが、すぐにダートになってしまい、それなりの装備の車でないと行けそうにない。道も荒れ放題で、ハイキング代わりに歩いたほうが良さそうにも思えた。とにかく、次回は伊豆天城鉱山跡を確かめてみたいものである。ちなみに、管理人の方に聞いたところ、伊豆天城鉱山跡は、既に何も無くなっていると言っていた。これが本当であれば、鉱山の遺物はキレイに撤去されてしまったものと思われる。参考までに、伊豆天城鉱山跡へと続いているハズの道を、以下に掲載しておこう。



写真20.大滝ランド入り口の手前に、もう一本道がある。これがどうやら、大滝の奥に位置する伊豆天城鉱山跡へ続く道のようだ。(違ってるかもしれないな。)このように、舗装道路はすぐに途切れ、後は荒れ放題のダートコースとなる。


写真21.そのダートコースの向こう側。曲がりくねった道が仁科川支流に沿って続いている。


写真22.そして、道路沿いには不法投棄された廃車が草むらに埋もれて眠る。。。。う〜む、どこまでカオスで不気味な場所なんだろうか。。。。




>> 廃墟系Top



Copyright (C) Studio Pooh & Catty
2002 - 2003