「墜落!の瞬間」 表紙


■墜落!の瞬間(The Black Box) (2005/08/23)

 この本は怖い。相当怖い!マルコム・マクファーソン編著の「墜落!の瞬間」は、事故で墜落した飛行機に搭載されたボイスレコーダーの記録を集めたものだ。当然、全て実際に起こった事故の記録であり、だからこそ、恐ろしさも倍増される。本書には、合計28の事例が掲載されている。どの事例も、最初に事故の概要を記し、その後墜落寸前までボイスレコーダーに記録されたやりとりが淡々と記載される、という形式を取っている。全ての事例に共通なのは、「テープ終了」という文章で終わっているということだ!
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 ところで、ボイスレコーダー(CVR)=ブラック・ボックスと取られがちであるが、実際にはブラック・ボックスとは「フライトレコーダー(FDR)」と「ボイスレコーダー(CVR)」とで構成されている。ブラック・ボックスという名称であるにもかかわらず、実際には発見されやすいようにオレンジ色に着色され、通常機体の尾翼付近に設置されているそうだ。本書によると、常時30分間記録されるエンドレス磁気テープが使用されており、コクピット内部の会話を記録する。テープ装置は3,300Gの加速度に耐えうるステンレス製容器に格納されている。

 本書で紹介されている28の事例中、筆者的に特に印象強かったのが、アエロペルー航空603便(1996/10/2)とUSエア427便(1994/9/8)の事故。アエロペルー航空の事故は、ありえないくらい単純な人的ミスのため、墜落してしまった。出発前の機体洗浄の際に、ボーイング757の静圧孔をマスキングテープで覆ったままにしてしまったことが原因だ。これを塞いでしまうと、気圧と高度を測定することができず、オートパイロット動作時に当然のことながら異常をきたす。計器がデタラメな数値を示し、しかも、パイロットにはその原因が判らないという事態が起きる。たったこれだけのミスで飛行機が墜落してしまうというのでは、やりきれない!

 一方、USエアの事故原因は、未だに特定されていない。この事例は、異常が発生する前のコクピット内部の長閑で楽しげな雰囲気が記録されており、それゆえ異常発生後との明暗が対照的で、恐怖が余計に増大されている。

 ボイスレコーダの記録には、会話の他に、墜落の直前に失速の危険を知られるために操縦桿を振動させる「スティック・シェイカー」の動作音や、地上接近警報装置が発する人工音声(プルアップ、テレイン、フゥープ、etc)等も、全て記載されているので、リアリティは相当なものだ。ところで、警告の人工音声「フゥープ」というのは、一体どういう意味なのだろうか?

 最後に、嘘のようなホントの話しが、本書前書きに掲載されている。1993年11月、中国北方航空MD-82型機の墜落時のボイスレコーダーの内容だ。地上接近警報装置が、英語で「プルアップ・・・プルアップ」と警報を発している最中、機長は副操縦士にこう質問していたそうだ。「プルアップってどういう意味だ?」

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「墜落!からの生還」 表紙

 ところで、「墜落!の瞬間」には続編がある。それが「墜落!からの生還(生存者が語る航空機事故の真実)」だ。前作がボイスレコーダに記録されたコクピット内部の会話だったのに対し、本作は航空機事故から生還した人のインタビューで構成されている。アメリカには「生還要因調査団」という組織があり、事故をくぐり抜けて奇跡の生還を果たした乗客のレポートが集めら、今後の航空機の安全対策に用いられているとのことだ。前書きには一見信じられないことが記載されている。それは「世界中の航空機事故の90%は生還し得る」というものである。欧州輸送安全委員会が出したこの考察によれば、「乗員・乗客が全員死亡するような大惨事は、かえって例外的な出来事である」というのだ。

 信じられないような見解であるが、統計的に見ると、そのような結果になるのかもしれない。本書では15の事例が紹介されている。いずれの事例も、事故の簡単な解説から始まり、ボイスレコーダの記録が掲載された後、生還した乗客・乗員のインタビューが記載されている。

「空中大災難」 表紙

 ついでにもう一冊。ワールド・フォト・プレス社発行の「空中大災難」というムック。これは、テストパイロットやスタントパイロット、有名人の航空機事故、動物を使った初期の人工衛星実験、飛行船の事故や果ては原水爆実験記録等、空中で発生した事故や災害の記録をビジュアルに編集したものだ。文章に若干荒削りな記述が見受けられるものの、内容についてはトリビア的知識満載で面白い。

 旧ソ連のスプートニク実験に使用されたハスキー犬は、実はモスクワ市内にウロついていた野良犬だったとか、トラブル発生でパイロットが離脱したハリアー戦闘機が1時間以上にも渡って無人で飛行していた事件とか、B-34爆撃機が、たまたま遭遇した知人操縦のDC-3旅客機に挨拶を送ろうとして接近しすぎ接触、結局DC-3が墜落してしまった事件とか、、、さまざまなトラブルが掲載されている。2005年8月25日初版の新刊。この手の雑学好きには面白く読めると思うよ。

(´ー`)у-〜

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