手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600。 |
■手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600 (2014/06/30) コンピュータ前史に目覚めてしまった筆者は、歴史の証人、語り部となるべく、さらなるレア・アイテムを求めてネットの世界をさ迷っていた。ここに取り上げた物も、そんな過去の遺産である。 手動穿孔機。その名の通り、電源不要でパンチカードに指定したコードを入力するためのマシンである。商品名はWright PUNCH MODEL 2600。アメリカ、ノースカロライナ州にあるWRIGHT LINEという会社が製造したものだ。製造年代は不明だが、パンチカードが全盛であった1960年代と推定される。 この装置は、当時最も普及していた「IBM 80欄カード:IBM 80-column card」専用である。パンチカードについては、過去本コラム「パンチカード (2010/11/06)」でも取り上げたので、詳細はそちらをご覧頂きたい。 使い方はビックリするくらい簡単だ。最初にカードを移動させるホルダーを左端一杯に寄せる。次にまっさらなカードを挿入し、ホルダー右側のストッパーで固定されるよう、左側のネジを調節する。これでカード実装は終了。その後、ホルダーを右側へ移動させ、カードの列を現すゲージが「1」のところにセットする。この状態で、カードに記録したいコードを入力する。 値数キーを若干強く押すと、カードに穴が空いた後で、カード本体が1列分移動する仕掛けになっている。値数キーは0〜12までの数字とSの合計13個あり、コンビネーションにより英数字と記号が47種類打ち込むことができる。例えば、「L」を入力したい場合には、「3」のキーと「11」のキーを同時に押しこめば良い。この換算表は、マシン上面パネルに貼付されている。 当然のことであるが、パンチカードは1枚ずつ入力する。複数枚のパンチはできない。また、最初に正確な位置決めを行わないと、穴の位置がずれるという点もある。 しかし、当時の計算機センターでは、パンチカード自動穿孔機は非常に高価であり、順番待ちをしないと使えなかったから、これはこれで手間はかかるものの手軽に打ち込みができ便利だったのであろう。また電源不要なので、どこでも使えるというメリットがある。 実際の利用シーンとしては、たとえば会社の人事課が、新入社員の登録を行う等といった際に用いられたものと思われる。 このような穿孔機は、東京理科大学近代科学史料館の「コンピュータデータベースのコンテンツ」にも掲載されている。 最後に、この穿孔機を使って出た細かい紙片(紙屑)はどうなるのかについて述べておく。端的に言えば「垂れ流し」である。穿孔機の下に、開けた穴の紙屑がどんどんと堆積するので、後で片づけなくてはならない。紙屑をまとめておくようなステキな設計になんか、なっていない。その昔、国鉄の改札で駅員さんが切符に鋏を入れていた時代、改札の床には切符の切りおとし屑が散らばっていた。それと同じである。大らかな時代の産物なのであった。
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手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600を使って穴を開けたパンチカード。 値数キーを順番に押していったもの。穴もノコギリ波のように斜めに連続している。経年劣化のためか、はたまた調整が悪いのか、穴の位置が若干ズレているのはご愛嬌。 →拡大 |
手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600の背面。 |
値数キー部分のアップ。 キーは総計13個搭載されている。 |
値数キー部分の側面。 金属製のユニットの中に、穴を開けるためのカッターが入っている。 |
コーディング一覧。 13個のキーを組み合わせることにより、47種類の英数字及び記号がパンチできる。 |
昔のタイプライターのような値数キー。 |
パンチカードの列位置を示すゲージ。 セットした後、このゲージの「1」の部分まで、カードホルダーを移動させてから使用する。またこのゲージを合わせることで、カード内の任意の列に打ち込むことも可能である。 |
手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600の裏側。 |
手動穿孔機 Wright PUNCH MODEL 2600の銘板。 アメリカ・ノースカロライナ州にあるWRIGHT LINE社製造。シリアル番号は「9823」番。 |
裏面のメカ部分。 可動レバーが見えるが、これはおそらく穴の位置を微調整するためのものと思われる。 |
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